ブレイクアウト - 最も使い古された投資手法

ブレイクアウトは、リチャード・ドンチャンが開発した投資手法で、過去N日の高値・安値を更新した瞬間に買う、主として中期のトレンドを取りに行く仕掛け手法です。 また、伝説の投資集団である「タートルズ」が使っていた仕掛けの手法として有名です。 今回は、初代タートルズのカーティス・フェイスが著書 「タートル流投資の魔術」 で紹介している45日ブレイクアウトを若干アレンジして検証しました。

買いルール

  1. 過去45日の高値を更新する
  2. 翌日の寄りつきでエントリーする
  3. 数日後の寄りつきで手仕舞いする

売りルール

基本的に買いルールの反対

  1. 過去45日の安値を更新する
  2. 翌日の寄りつきでエントリーする
  3. 数日後の寄りつきで手仕舞いする

拡大ブレイクアウト - 全てのブレイクが買いとは限らない

拡大ブレイクアウトは、ブレイクアウトの派生として、ジェフ・クーパーが 「ヒットエンドラン株式売買法」 にて紹介した短期売買の手法で、 ブレイクアウト発生時にしばしば生じるだましを回避するために考案されました。 ブレイクアウト発生時の値幅が過去9日で最高の場合のみ仕掛けることが条件として付与されています。 今回、通常のブレイクアウトと比較してどれだけ優位性が上がるかを併せて検討するため、原著では買いエントリの条件として当日高値+1tick上下に逆指し値注文を入れるとなっていますが、 単純ブレイクアウトと比較するため、翌日寄りつきでエントリする条件にアレンジしました。

買いルール

  1. 過去45日の高値を更新する。このとき、真の値幅は過去9日で最大である。
  2. 翌日の寄りつきでエントリーする
  3. 数日後の寄りつきで手仕舞いする

売りルール

基本的に買いルールの反対

  1. 過去45日の安値を更新する。このとき、真の値幅は過去9日で最大である。
  2. 翌日の寄りつきでエントリーする
  3. 数日後の寄りつきで手仕舞いする

結果 - 日本株式

テスト期間:2000/1/1 - 2010/11/1

単純ブレイクアウト

日数取引数勝率E比率期待値
14064046.61.005-0.007
33176747.01.017-0.013
52694747.41.033-0.006
102077248.61.0560.023
151738149.41.0780.067
201503349.61.0830.077
251321648.91.0730.048
301184349.01.0710.035

拡大ブレイクアウト

日数取引数勝率E比率期待値
11691345.91.002-0.007
31561247.31.034-0.006
51474747.71.0520.015
101307348.71.0700.028
151171848.11.0710.022
201059448.91.0790.043
25970549.01.0700.056
30892548.61.0730.056

長期保有で効果を発揮

いずれのケースにおいても、保有期間が1~3日の短期保有ではE比率がほぼ1で、期待値もマイナスとなり、優位性が無い状態になっていますが、 保有期間が5日以降ではE比率・期待値が徐々に改善していっています。 元々、中期から長期向けのシステムとして開発されている手法なので、この結果は妥当と云えそうです。

単純ブレイクアウトと拡大ブレイクアウト間での優位性の違いは今回の検討でははっきりしませんでしたが、 拡大ブレイクアウトの条件を原著以外の条件で色々検討してみることで優位性が高められる可能性はありそうです。

ただし、いずれの手法にしても日本株式においてはブレイクアウトで単純に仕掛けるだけではあまり有利な取引はできなさそうです。 あまりに有名になってしまった取引手法である以上、優位性が落ちてきてしまっていると云う事なのでしょうか?